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特集オーダーで「こだわり客」囲い込む


1 オーダー対応の種類、テイスト、価格

フルオーダーとパターンオーダーの対応

 特集の2では、オーダーを売場のメニューにして、集客だけでなく、売上げのアップに結びつけている店・工房をレポートした。
 現在、靴のオーダーには、2つのスタイルがある。フルオーダー、あるいはビスポークという呼び名で、木型の製作もカスタマイズした、完成まで全てに渡って個人対応のオーダー・スタイルがひとつある。
 もうひとつは、パターンオーダー、カスタムメイド、ハーフメジャーといった呼び名で対応するオーダーがある。こちらは、木型は既存のモノを使い、アッパーやソールの素材、色を変えるというもの。ここでは複数の木型からつくられたフィッティングのためのサンプルシューズを用意し、自分に合う木型の靴を選んでもらっている。さらにここでは、”のせ甲”など木型修正で、よりフィットさせるための対応がなされている。
 サンプルシューズには、定番的に売れているモデルの木型からつくられるモノもある。また、売場での計測データからメーカーの木型を選び出し、ベストフィット靴を製作するといった対応の仕方もある。
 基本的には既存の木型を使うが、パターンオーダーといいながらも、足の計測データを基に木型まで製作し、顧客の要望するデザインでつくられるモノもある。ここでのフルオーダーとの違いは、一連の製作の過程で、フィッティングのための靴をつくるか、つくらないかが大きな違いである。

1万円を切るものから、50万円まで

 オーダー靴の値段には、大きな幅がある。フルオーダーといいわれるモノの中には、50万円近くのモノもある。木型は一生モノとして保存され、当然ながら2足目からは木型の製作代は料金には加算されない。
 一方、パターンオーダーでは、PU素材を使ったものでは、1万円を割ったモノも誕生している。また、完成品の値段をもうけず、製作の過程で段階的に値段を付けて行くというシステムにし、価格の負担を分散することで、フルオーダーの靴を体験してほしいとする工房もある。



在庫を持たす、再来店で顧客化できる

 売場がオーダーに取り組むメリットはどんなことがあるのか。
 フルオーダー、あるいはパターンオーダーを求めるお客の要望には、「もっと快適な、自分の足に合った靴がほしい」といった、より快適な靴への要望がある。また、「自分だけの、ほかにはない靴がほしい」といった、カスタマイズしたファッション性を満足させるための欲求もある。
 こうした「こだわり客」の要望に応えることで、固定客をつくることができる。とくにフルオーダーでは、4回ほど来店してもらって完成させている。パターンオーダーでも最低2回は来店してもらっており、こうした再来店を促すことが、固定客化につながっている。
 小売店にとって、在庫を持たずに対応できることも、大きなメリットであろう。パターンオーダーでは、サンンプル靴、ゲージ靴というフィッティングのための靴を用意する必要があるが、一般的な品ぞろえと比べたら数は限られている。フルオーダーであれば、在庫はゼロである。
 オーダーに対応するためには、顧客の要望を聞き、足の計測から一連の作業行程には時間は掛かるものの、価格が通るのもオーダー対応のメリットであろう。製靴では2万円台が日本製の靴では上限のなか、3万円を超えるオーダー靴は多い。
 オーダー靴の特化することは、売場を構えたお店にとっては難しいことかもしれない。しかし、売場で実際に製作しなくてもオーダー対応は可能であり、コンフォート、あるいはファッションでの個人的な要望に応えられる販売メニューとしてオーダー対応することは、売上げにプラスオンするモノの一つとしても有効であろう。
 


2.オーダー対応の店・工房

 キビラ銀座コア店(東京・中央区)

高品質で低価格なカスタムオーダー

キビラの最大の特徴は、オーダーシューズを9990円からというリーズナブルな価格で提供すること。素材がストレッチ入りケミカルのため足当たりがよい。また、素材をジャパンレザーにした場合は、価格が1万9900円、2万0900円になり、中敷きのクオリティも高くホールド感もアップする。
オーダーシューズはカスタムオーダーで、手順は以下の通り。
@タブレットで顧客本人に会員登録をしてもらう。会員登録するとそこに足の計測データなどが入る。
A最新鋭の3D測定器で足を立体的に計測し、足型分析を行う。
B足型判定シートをもとに分析を説明する。
C自分のサイズ+足幅+選んだ木型の靴をフィッティング。
D数種類のバリエーションから好みの靴を選択し、タブレットで注文を行い、注文の確認作業を行う。
Cオーダー後、約3〜4週間で自宅へ無料にて配送。
デザインはバレエ、パンプス、ブーティなど20型以上をラインアップ。サイズは21・5〜26・0pを用意。注文後、日本の工場で製作する。

顧客は仕事でパンプスをはく女性が中心

顧客層は、仕事でパンプスをはく女性層が中心だ。既成ではサイズが合いにくい、ハイヒールをはきたい、現在はパンプスをはいていないがオーダーならはけるのでは、といったニーズが多い。
ヒール高は7cmだが、5cmヒールの感覚ではけるので圧倒的人気だ。デザインはシンプル、つやありとつやなしの黒、ソフトエナメルのピンクベージュ、ベージュ、ポインテッドトウが好まれている。
「入学式に間に合わせたい」「結婚式に間に合わせたい」など早く入手したいという要望に応え、プラス2000円でスキップオーダーが可能だ。スキップオーダーは1週間〜10日間で配送する。
 また、「オーダーシューズお仕立券」(9900円)は、男性からのプレゼント用として人気がある。
「銀座コア店はとくに、ラボにたっぷりとスペースをとっています。サロンのような状態でくつろいでオーダーを楽しんでいただきたい」(中村梢店長)。





 モードハヤマ(神奈川・藤沢市)

男女ともパターンオーダーを扱う専門店

 コンフォートシューズ、オーダーシューズの専門店としてオープンして29年。オープン当時からウイズのバリエーションにこだわってきた。理由はもちろん多くの人に対応するためである。
 紳士靴のカスタムメイドは、宮城興業の「和創良靴」。サイズは22〜30cm、幅が8種類から選べ、左右別々のサイズ、ウイズも可能だ。約60種類のデザイン・約50種類の革から選べ、セレクト次第でビジネスからカジュアル、ゴルフシューズにまで多彩なバリエーションがある。
オーダーの手順は、足長、足囲、足幅、足高、かかと回りなど足の計測を行い、計測結果に沿って靴の試着を行う。フィッティング用のゲージ靴から最適なサイズを選びだし、きつい箇所は「のせ甲」の提案をして、よりベストなフィッティングを目指す。デザイン、トウの形、甲革、底材、コバの形状やインナーの色など25項目位を決定していく。希望する細かい対応もオプションで対応していくので、カタログにないデザインもOKだ。
 顧客層は、20代〜60代のビジネスマンが中心。フィット感プラスデザインや、他にないオプションを求める人が多い。また足幅が狭い人、広い人など、既製品では合う靴が見つかりにくい人も足を運ぶ。関東圏が中心で全国に広がり、遠方から出張のついでに来店する人も。仕上がりは約40日。基本価格は3万9000円、ブーツ4万2000円。

豊富なウイズがそろう婦人靴のパターンオーダー

 婦人靴のパターンオーダーは「カルツェリアホソノ」「ケンプランター」「パサパ」などパンプスからカジュアルまで多彩に対応している。
「カルツェリアホソノ」は、3〜7種類のウイズ、甲革は80種類以上ある。サイズは21・5〜25・5p。26・5pまで対応できるものもある。穴飾りや切替えやパイピング、ベルト付けやヒールの太さの変更など、おしゃれな女性に嬉しい対応である。価格は2万7000円〜。
また「ケンプランター」は4種類のウイズ、トウの形を選べる靴や、カッターソール・フラット・ローリングとソールを三択できる靴もある。カウンターがしっかりしていて、気持ちのよいインソールが特徴だ。価格は2万9000円から。「パサパ」は2種類のウイズ、ウェッジヒールまたは太ヒール(オプション1000円)が選べる。厚く軽量なフットベッドが標準掲載。価格は2万6000円から。
3ブランドとも、仕上がりは20〜40日。有償オプションで左右別サイズが可能だ。のせ甲やつま先の厚みを増す加工も受ける。また「デザインが好きなのにヒールが高い」という人には、ヒールの低い木型にのせ換えてオーダーを受ける。
 婦人靴の顧客層も悩みを多く抱えている。幅が狭い、広い、足が大きい、小さいに加えて、外反母趾や開帳足、膝の痛み、はきたいデザインがない、好きな色の靴がないなど、女性に悩みは数多い。「悩みに応え、対応力をより高めていきたいと思っています」(筒居千恵美オーナー)。