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特集 これからの靴EC市場   徳江実/アルコット

数年のうちに急速な拡大が見込まれる靴EC市場

 経済産業省によると、日本の16年EC売上げは9・9%増の15・1兆円で、うち物販が10・6%増の8兆0043億円。スマホ経由がその32%で、2・6兆円となっている。
 物販中のECシェアは5・43%と前年4・75%から0・68ポイント増で、5年前の3・17%から着実に増加している。中国や英国の15%台、米の7%台に比べるとまだ少ないが、その差は期待値とも考えられる。日本の物販EC成長率を11%とすると、20年には12・1兆円に、5年後の22年には15・0兆円に達することが見込まれる。
 Eモールの16年流通総額は、推定で中国アリババ62兆円、アマゾン30兆円(うち日本1・8兆円)、中国JD10兆円、eBay8兆円、楽天3兆円。トップは世界一の企業ウォルマートの売上げ52兆円を超えている。
 靴ECはABCマートが、17年2月期でEC売上げ70億円、ゾゾタウン分が伸び、オムニチャネルが売上げの5%と発表。同様に自社サイト、楽天、アマゾン、ゾゾタウンなどを並行運営する企業が増えている。コスト増だが、それぞれ固定客がいて現在は当然の策といえる。
 ユーロモニター調査では、世界の靴のEC販売は15年には22%増え、EC化率が12%となるという。日本の靴市場規模は、FWP推定で14年1・4兆円、その後横ばいとすると、靴ECは16年がシェア6%で980億円、20年がシェア12%の1440億円、22年がシェア16%で1740億円となる。
 反動で実店舗は減収し、退閉店が増え続ける。SCテナントも16年中に全国でファション雑貨が2・9%の435店減少、ファッッション店が4・0%の1224店減少した。SC自体も閉店検討中の施設が各地に多数ある。
 クレディスイスが今春、ショッピングモールの25%が5年以内にクローズすると発表した。真意は不明だが、ショッキングではある。
 ネットと実店舗は、東京など大都市を除けば、商品種の差が圧倒的だ。14年商業統計の靴はき物店8700店も22年は6000店ほどになるか。靴のEC店や靴も扱うEC店は激戦ながら増えていく。実店舗は安心感とフィッティング力が格段に上なので、そこは強化していきたい。


アスレチック企業もEC売上げを大きく伸ばす

 米の16年靴売上げは、ワンクリックリテイル調査で5%増の360億ドル(3・9兆円)。うちアマゾンが35%増の16億ドル(1700億円)。シェア4・4%で、マーケットプレイス(中古市場)分を含むのか不明だが、17年上半期も18%増。アマゾンは服も米販売シェアが15年6・7%で、5年後の20年には3倍の18・8%となると予測されている。
 ナイキは米でスニーカーのシェア5割だが、UBS調査で、今年上半期のナイキ購入先の1位はアマゾン13%、2位はフットロッカー9%だった。昨年上半期は1、2位が逆で、各10%、14%で大きく変化した。ナイキは偽物対策としてアマゾンでの直販も開始し、EC直接売上げを20年50億ドルと発表。アディダスもEC直販の売上高を、20年に35億ユーロ予定とした。
 フットロッカーはECが不得意のようで、今年下半期予測を減収と発表、株価も大きくダウン。低額のペイレスシューソースは4月に破産申請。400店を追加閉鎖し、再建模索中だ。
 前記の経産省データでフリマアプリのCtoCは3052億円。メルカリはつけ払い可としてさらに急伸、靴の出品をレディス80万点以上、メンズ30万点以上としている。利用者はまことに便利なのだが、万引き本やコンサートチケット、現金、転売など怪しい出品や未着などのトラブルも増え、法規制が必要との声がある。紆余曲折しながらさらに伸びそうだ。
 TVショッピングも大手2社が売上1千数百億円とジャパネットたかたに拮抗。主対象は40〜50代女性で、レジャーなのか考えたくないのか、瞬時に電話注文する。大きな隙間ビジネス? だった。


まだまだ可能性のある店とECを結ぶオムニチャネル化

 EC大国とされる英国と日本のネットショッピング比較で、トラブル経験が日31%、英55%。返品経験なし(食品を除く)が日81%、英32%。店での受け取り経験ありは日18%、英54%。ネットでも実店舗でも購入できる商品では、店で購入する人が日本では7割もいた。
 店と複合のオムニチャネルは周知と改善がまだまだ必要で、来店してもらえば安心も納得度を高められ、EC商品の返品の場合も他の商品購入に導ける。
 ジーフットはiPadを使った店頭での在庫確認や客注利用が、昨年には6・7万件に増えた。ウォルマートはEC注文品を店で受け取ると値引きし、従業員が帰宅途中で配達するサービスも始めた。
 SNSも高頻度の更新が望ましく、関連してPBの質向上と点数増も必須になる。
 自動化では独メトロが電子棚価格札を365店に導入、価格を一瞬で変更できるようにした。
 米アマゾンは宅配便用ロッカーをSCや駅などに設置していたが、集合住宅にも設置サービスを開始。アマゾン以外も利用できて便利に使える。
 スマホで決済し、レジを通さず買い物できるウォルマートとサムズクラブのスキャン&ゴーも拡大中。アマゾンもより高機能のアマゾンゴーを自社内コンビニでテスト中だ。
 店でのスマホ決済率は世界で16年4%だが、21年には21%のまで伸びると予測されている。日本はおサイフケータイの利用率もあがらず、ApplePayやAndroidPayもまだSuica用にしか使われない。20年東京五輪の外人対応で進展する可能性があり、良く使われるカードのイオンWAON、7&Inanacoとの連携もありえる。
 靴EC用のフィッティングやオーダーのシステムはさまざまな試みがなされているが、こちらはまだ試行錯誤中だ。