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浅草エーラウンド 2017/Autumn

皮革産業の現場を一般公開

荒天の中、5000人を集客

靴の製造過程を見せ、ワークショップも開催

 観光地として、日本を代表するスポットである浅草。だが、この地区は古くからのモノづくりの街であり、靴や革の産業もさかんな土地柄だ。その側面を「もっと知ってほしい」という気持ちから、浅草エーラウンドは始まった。2013年からスタート、年2回、春と秋に行われ、今回で9回目を数える。
 会期は10月20〜22日の3日間(最終日は台風の影響で中止)。街を回遊しながら浅草を知ってもらうイベントには、約100社が参加している。卸のショールームや工場を参観者に解放しており、靴づくりの工程を素材、裁断、縫製から仕上げまで見ることができるのも特色で、そのためのツアーも用意されている。体験型ワークショップも充実していて、20以上が開かれた。
今回はイベントを公募、出展社、ボランティア、ファンなどからなる「エーラウンドファミリー」とよばれる人たちの間から「貸し自転車ツアー ループ」や、人材マッチングシステム「I want you」などが生まれた。また、「飲食もモノづくり」という立ち位置から、21日には「」として、各店舗が「限定肉メニュー」を用意した。
 「外国の方もたくさん見えて、ワークショップに参加しています。産業観光という位置づけですね。今後、対EUの関税がなくなり、世界の一流品がヨーロッパからたくさん入ってくるでしょう。そのとき、世界と競争し勝っていかなくてはなりません。浅草の革製品が世界に出ていくための一助となりたいですね」(富田興業・富田常一社長/エーラウンド発起人代表)。
 参加者は毎回2万人を越え、すっかり知名度も上がった。今回は東京メトロが「街歩き」として参加者を募集したところ4000人も集まり、うち2000人が参加したという。

人材マッチングシステムも登場

 今回初の試みとなった人材マッチングシステム「I want you」は、「浅草には人材不足に悩む企業が多い。エーラウンドに来る人はモノづくりに興味がある人だから、マッチングできないか」と考えだされたもの。したまち仕事舎≠フ小平明さんは人材コンサルタントで、募集のあった企業各社にていねいに取材している。エーラウンドで応募すれば、実際に会社に行って工房をのぞいてみることができるのも強みだ。
 「桜橋レザーパーク」は、富田興業の本社ビルが会場。2階ではレザーの直販会が行われ、5階では革小物をつくるワークショップが開かれた。また、隅田公園内で開かれた「エーラウンドマーケット」では、革や小物のショッピングから屋台のグルメも楽しめた。
 近くには「吉田カバン創業者 吉田吉蔵記念館」があり、当時のアトリエのようすを見ることができる。2階では野谷久仁子氏の革手縫い教室が開催され、生徒たちがバッグや椅子づくりに励んでいた。野谷氏は、吉田の創業者・吉田吉蔵氏のお嬢さんで、手縫いの技術を広め、後世に伝えたいと教室を開いたという。
 「今戸焼 白井」の現在の当主、白井裕一郎氏は6代目。今戸焼はもともと瓦や火入れなどの日用品からスタート、1852年から招き猫をつくるようになり、有名になっていく。現在では、この「今戸焼 白井」が、最後の窯元という。浅草の歴史と伝統をうかがい知ることができた。