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特集 こだわりミセスのお気に入り
マーケティング

慎重な購買行動で、本当に欲しいモノだけを購入

特集では30代〜40代のミセスを主客層とする売場を取材した。
ここでは、今売れている商品と併せて、最近のミセスの購買動向や売場の顧客づくりについても聞いた。
物販に対する消費が低迷する中で、靴に対する購買意欲に変化はあるのか、今ミセス層が求めている靴はどのようなものか、ボリュームとなる価格に変化はあるのか、イーコマース(EC=ネット販売)が拡大する中、売場での顧客づくりにどう取り組んでいるのか、といったことも聞いた。

 購買意欲

バーゲンも盛り上がらない

百貨店の中でコーナー展開をしているフタバヤでは、「富裕層の購買意欲に変化はない。しかし、中間層が背伸びできなくなっているため、全体的に落ちている」と、これまで消費をけん引してきた層の不振を指摘する。また、「靴の投資しない消費者が増えている」とも言う。
マロニエゲートの靴売場は、プランタンから社名が変わった機会に、ケミカルから革靴にウエートを移しているが、「来店客の購買意欲に変化は見られない」という。しかし、「これまでよりも目的買いの人が増えており、近隣ショップも含めて買い回りし、購入商品も比較検討して決めるなど、慎重な購買行動を取っている」と指摘する。
ジュマペルカナデも同じような見方で、「何度か売場に訪れ、本当に欲しいモノだけを購入している」と話す。
こうした慎重になっている消費は、シーズン末のバーゲンでも見られ、「これまでのような盛り上がりは見られない」と話す売場もある。

実店舗で足入れをして購入したいお客は多い

価格に対しては、バークレーは1万円代中盤から2万円代の商品を展開しており、固定客はあまり価格を気にしていないというが、「初めて来店される方には高いと思われるようで、プライスを見て帰ってしまう方が多い」と話す。
 市場拡大しているイーコマース(ネット販売)の影響をあげる売場は、今回の取材先にはなかった。バークレーもネット販売の影響はないという。むしろ、ミセスは靴を購入する際は、売場で足入れをして買いたいと考えている人が多い、という見方だ。
フィットフィットは実店舗とイーコマースの両面展開を進めるが、店舗数がすでに50店舗を超えるなど、実店舗の展開にも力を入れていることがうかがえる。


 人気商品傾向

はきやすさと値ごろ感に、トレンド性も求める

ミセス層に売れている商品は、トレンド性、値ごろ感、はきやすさといった要素を備えた商品である。
トレンド性については、「母娘で同じ靴をはき分けるような、感覚を共有する傾向がある」(銀座ヨシノヤ)ことで、ミセスの感覚も年々若くなっている。このため、若い層向けのトレンド性をミセス向けの商品にも取り込んだものが売れている。
値ごろ感については、売場によって価格のボリュームラインは違っているが、付加価値の高い商品がより求められている。また、オン・オフのシーンで兼用できる商品がこれまで以上に求められている。これも付加価値の高い商品となっている。
はきやすさについては、コンフォート商品でなくても、快適な靴が求められている。パンプスやブーツではローヒールが売れているほか、5cmを超えるようなパンプスでは、チャンキーヒールやウェッジのような、太目で安定したヒールが人気だ。
また、はきやすさを求めて、ローファーやレースアップのような、定番的なデザインのマニッシュも支持されている。ここではアクセサリー使いのきれいなデザインが求められている。
機能性へのこだわりは、ミセスに限ったものはないが、オリジナル商品を販売するフィットフィットでは、軽度の外反母趾を想定し、アッパー素材の一部にゴムなどソフト素材を使い、足あたりの良い靴を開発している。
求められている機能商品には、晴雨兼用ではくことのできるオールウェザー<^イプのローヒールパンプスがある。ソフトエナメルやはっ水・防水加工の素材でつくられたパンプスなどは人気となっており、さらに増えそうだ。

ファッション+はきよさでスニーカーに関心

スポーツ庁が「スニーカー通勤」を提唱しているが、これに対しては、多くの売場が「都心部に勤める女性が通勤ではく靴は、低寸であってもきちんとした靴でないと売れない」と考えている。
しかし、売場によってまだ差があるものの、ミセスの新たな人気アイテムとなっている商品にスニーカーがある。ブランドスニーカーとは違う、ファッション提案のスニーカーだ。すでに展開している売場では、スニーカーとカジュアルの中間的な、スポーティーカジュアルの商品を扱っており、人気となっている。また、フィットフィットのように、街歩きのスニーカーとフォーマルなシーンではけるパンプスのミックスしたパンプニーカー≠オリジナルで開発しているような例もある。


 顧客づくり・接客

時間をかけた会話と履歴カードづくり

ミセスを対象とした顧客づくりについて聞いた。
足のトラブルや靴選びで悩んでいる人は若い子より多いため、接客では時間をかけている。フィットフィットは「平均すれば、1人に1時間ほど接客している」という。じっくり話を聞いてから、気に入った商品の試しばきをしてもらい、こちらが勧めたい靴もはいてもらうことで、満足感を提供している。
カスタマーカードへの記入に応じてもらいやすいのもこの世代だ。接客を通して聞いたパーソナルな情報を記入し、そのカードを活用してサービスを伝えるDMなどを行い、再来店につなげている。さらにウエブ会員に登録すれば、5%の割引サービスをするなど、新しい販促手段に取り組んでいる売場も出てきている。
マーレマーレ・デイリーマーケットでは、スタッフによる手書きPOPを、陳列棚の各所に置いている。コーナーの商品をわかりやすく説明するほか、親しみやすい売場を演出するもので、入店のきっかけづくりになっている。



売場レポート

 フィットフィット 自由が丘店

カジュアル過ぎず、エレガントさを求める

アッパー部分にゴア使いのショートブーツが人気

 昨年4月に駅前に移転した、フィットフィット自由が丘店。アパレルの通販事業からスタートし、「軽度の外反母趾の方がはける」というコンセプトの下、靴専門店も多店舗化。現在は全国に50店舗を構える。
 中心客層は40代以上のミセス層が中心。しかし、はきやすいもの・足に良いものを求めて、若い人が来店することも少なくない。また、最近では40代の3人に1人は外反母趾というデータもあり(同社調べ)、足に悩む人は決して珍しいことではないことも、同業態が伸びている背景にある。
 秋冬はやや長めのショートブーツがよく動いた。ベルト使いのデザイン性やはっ水加工の素材使い、軽量感など機能面でも支持された。外反母趾の方がはいても足の指が当たりにくいよう、アッパー部分にゴアが使われているのも特徴だ。
またサイドゴアやバックファスナーのタイプなど、すっきりしたデザインのブーツが今年はよく動いた。特に柔らかいレザーが使っていて、屈曲性もすぐれているタイプだ。


外反母趾でもはけるパンプス“パンプニーカー”

 近年はミセス層にもスニーカーが支持されていることから、フィットフィットでもきれいめなスニーカーを提案。インヒールを内蔵し、ビジュー使いやベルベット素材にするなど、エレガントさも加えたスニーカーにしている。
 「弊社の立ち上げが2011年の大震災直後でした。その震災を境に、女性の靴にたいする意識が、歩きやすいものに向いたような気がします。その後はスタイリッシュなコンフォートの波が来て、私たちのアイテムも徐々にマーケットに支持されていきました」(広報/PRマネージャー・工藤芽生さん)。
同社に主力客層であるミセスの需要については、カジュアル過ぎるデザインではなく、どこかにエレガントさを求めているとして、“パンプニーカー”というスニーカーのように歩けるパンプスのシリーズなども開発している。
「特に外反母趾の方は、もうパンプスがはけないと思っています。そんな方に足に合ったパンプスがあるということで、とても喜んでいただけます」 (工藤さん)。


 ジュマペルカナデ ジョイナス店

はきやすさ、値ごろ感に加え、デザイン性も求める

6900円という値頃で、履きやすいパンプス

 横浜駅の横浜ジョイナス内にある同店は、20代から60代と幅広い女性層が訪れる。
 ミセス層に人気のあるのが、シンプルなデザインのパンプスだ。これは機能性が充実しており、柔らかくて返りがよいアウトソール、クッション材が入った中敷き、足あたりがよいソフト素材のインナーなどが支持を集める理由だ。それにプラスして、価格面も6900円という手が出しやすい価格で、ソフトな合皮エナメルで天候も気にならないという点も見逃せない。
機能面、価格面だけでなく、おしゃれなデザイン性も欠かせない条件だ。例えば、シンプルなデザインでも切り替えがあって足がきれいに見える、ヒールにワンポイントのアクセントが付いているなど。
カラーは通年で使えるグレーのほか、ボルドー、カーキー、黒などが動く。

スーツでスニーカーを違和感なくはく

機能面で特に人気のブランドが「オールデイウォーク」。パンプスを楽にはきたいという固定ファンがついているのが特徴だ。これまでスクエアトウのラストを多く展開していたが、ソフトなアーモンドトウのパンプスを発売し、機能性にプラスしてそのすっきりとした見え方が人気となり、購入者が増えた。
また、これまで若い層に限定されていたスニーカーの購買層も、徐々に年齢層が上に広がっており、30代〜50代もスニーカーをはきたいという要望が増えている。
そのような層に人気のあるのが、いわゆる大人のスニーカーだ。「スピングルムーブ」「パトリック」「カルフ」といった、大手ブランドとは違うものが好まれている。
「スニーカーのコーディネイト範囲が広がっている印象です。スニーカーでも、『スピングルムーブ』『パトリック』など、スーツとのコーディネイトに違和感なくはかれています」(磯貝麻里店長)。
 もう一方で、「スニーカーはカジュアルすぎるので」という層も確実にあり、そういう層に好まれるのが、ローヒールパンプスやローファーだ。「これからはミセス層でも、多彩なニーズが広がりそうです」。