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![]() 中長期戦略を欠いたままの業績向上ナイキの2018年5月期の業績は多くの疑問をはらんで発表された。ナイキは第1四半期業績が13%の2ケタ増収、懸案だった北米も3%増収で、好転の兆しが見えると自画自賛した。確かに表面的には発表通りの数値を計上したが、そうは問屋がおろしそうにない事情も抱えたままである。17年から始まった業績低迷は、本拠地北米の低迷、バスケット王国の崩壊、さらに今年3月には企業モラルの欠如という思いもかけぬ醜聞まで抱えこんでしまった。いったいどこが力強い復活だと反論したくもなるが、空前のニューモデル投入で、数字のつじつまだけは合わせることができた。 しかしジョーダン事業部再編制は目処がたたず、バスケットシューズ市場は成長復帰に苦戦している。次期成長ドメイン育成も一瞬の猶予も許されない。 過去一年間のナイキR&Dは量に任せた絨毯爆撃みたいなもので、中長期の成長を見据えた戦略的攻勢ではない。したがって回復効果は短期間にとどまる。中長期戦略を欠いたまま、短期物量作戦で業績向上を収めても安定的成長は難しい。 さらにナイキは今ひとつ重大な課題を抱えている。影響が企業浮沈にも及ぼうかというエグゼクティブ大量離脱の後始末である。15人に及ぶ有力エグゼクティブの同時戦線離脱は、主力ポスト補充、新ポスト創設、エグゼクティブネットワ−ク再編成、コーポレイトカルチャー再構築が必要で、一朝一夕に片がつく課題ではない。ナイキはプロダクト強化に専念するあまり、この分野にはほとんど手つかずの状況である。 遅れるストア開発とネットワーク化ナイキが1982年以来30年ぶりに迎えた危機は、未だ解決していない。マーク・パーカーはこの難局を本当に乗り切れるのか。6月28日発表した18年5月期業績は連結売上高363億9700万ドル(前期比5・9%増)、純利益19億3300万ドル(同54・4%減)となった。ナイキブランドのみの売上高は344億8500万ドル(同7%増)、コンバースは18億8600万ドル(同6%増)である。 ナイキの販売数値は卸売部門が2%増、直販部門が12%の増収だった。もはやフットウエアストア供給中心では、成長路線を維持できなくなっている。しかも直販部門をリードしているのは25%という高成長を続けているデジタルコマースである。 ![]() これからみて明らかなことは、ナイキ成長の戦略オプションは、コラボレーションやニューモデルの大量投入にあるのではなく、ニューリテイルスタイル・フォーマット開発とオリジナルストアのネットワーク構築だった。わかりやすく言えば、新型の売れるストア開発とそのネットワーク構築だったのである。 過去の思い出になったバスケット王国ナイキのここ2年間の業績からみて、現状ではアディダスに対抗する2ケタ増収は困難である。現在、2ケタ増収カテゴリーは、エアジョーダン以外のバスケットシューズとスポーツウエアの2カテゴリーだけである。バスケットシューズはいわばアディダスのオリジナルスに該当する部分で、今後も成長ポテンシャルを保有し続けるだろう。それ以外のカテゴリーでは、戦略的な成長ポテンシャルは期待できそうにない。カテゴリー別売上げは、最大カテゴリーのスポーツウエア(100億ドル)が前期比11%増、ランニング(52億ドル)は同7%増、バスケットボール(ジョーダンを除く:15億ドル)は同16%増だった。ジョーダンブランド(29億ドル)は同8%減である。 18年5月期で最大の注目点は、売上げ減少に見舞われていた北米市場で、今期総合売上高は148億5500万ドル(前期比2%減)で黒字化できなかった。一方、1〜3四半期連続減少だった北米フットウエア売上げは93億2200万ドル(同4%減)だった。北米はフットウエアのみでは第1四半期(3%減)、第2四半期(4%減)、第3四半期(4%減)、第4四半期(3%増収)だった。 ナイキはなりふり構わぬ大量モデル投入でリカバリーに全力を傾け、第4四半期には増収に漕ぎ着けたが、ついに年間ベースで増収には到達できなかった。 17年から始まったナイキ業績低迷は、ジョーダン減収が最大のブレーキになっていたが、ジョーダン以外のバスケットを総合しても前期比1%の減収に終わっており、今やバスケット王国の面影は遠い過去になった。北米業績はこれまで常に2ケタ増収をキープし、他を寄せ付けぬ強さをみせてきたが、18年5月期はついに減収に転落した。 北米アパレルも前期比1%増までスローダウンしているから、近い将来、北米の年間総売上げが恒常化的にダウンターンに向かう可能性は高い。 もう一つのトラブルは、3月から始まった総計15人の第一線エグゼクティブが次々に退任したことだ。しかもそのほとんどが、就業時間内のストリップクラブ通いや女性社員へのセクハラが退任理由だった。 本拠地の落城、バスケット王国の崩壊、企業モラルの欠如で、今やナイキは存続の危機に直面している。82以来30年ぶりの危機である。マーク・パーカーがこの難局を乗り切れるかどうか大いに疑問である。 |
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