今月の記事・ピックアップ 2018・9
 HOME > フットウエアプレス > 都内のちいさな店 「ボエーム プリュス ボーデッサン」
都内のちいさな店 「BOHĒME PLUS BEAU DESSIN」 (ボエーム プリュス ボーデッサン)

「ボーデッサン」を知ってもらい、日本製の革バッグを好きになって欲しい

中庭のある店舗で、本物と向き合える場

東京・台東区の西に位置する「谷根千(やねせん)エリア」は、今では国内だけでなく海外からの観光客も多い人気の街だ。三崎坂(さんさきざか)を上りきった、日暮里駅からほど近い場所に、今年2月に「BOHEME PLUS BEAU DESSIN(ボエーム プリュス ボーデッサン)」がオープンした。
30年以上も前に、バッグのオリジナル・ブランド「ボーデッサン」を立ち上げた、生嶋時彦さんがオーナーのショップだ。
「ボーデッサン」は、〝大量生産品には真似のできないものづくり〟を掲げて、1979年にスタート国産レザーブランド。ライセンス・ブランドが席巻していた時代に、国内工場を設け、バッグ職人によるものづくりに取り組んできた。生嶋さんはその先頭に立ち、これまでのOEM中心のモノづくりを見直し、今までにはなかったジャパンブランドを提案する、新たなメーカーへとかじ取りをしてきた。

今回、小さなショップ(店舗面積8坪)を立ち上げた経緯を、生嶋さんは次のように話す。
「60歳のタイミングで、ボーデッサンを卒業することを考えていました。ただ、このブランドはもともと自分がゼロから立ち上げたこともあって、強い想い入れがあります。長らく夢だった『ボーデッサンの中でも、本当に好きなアイテムだけを集めたショップ』を実現するために〝ひとり応援団〟のような形で、この店を立ち上げました。界隈に長く住んでいたことから、大家さんとのご縁もあって、この中庭のある物件と出会ったことも、大きなきっかけになりました」。
 店舗の玄関は、カラカラ鳴る日本式の引き戸がついている古風なつくり。表通りからはわかりにくい場所だが、だからこそ静かに〝本物〟と向き合うには最適な場所だという。春と秋には、お茶を飲んだりくつろいだりする、贅沢な中庭もある。中央の大きなテーブルでは、セミオーダーやワークショップなどのイベントを開催して、人が集まれる〝場づくり〟もしたいと話す。

小売の原点に返り、買われる喜びを感じる

これまではメーカーとして、企画、MD、職人さんとのやりとりなど、ものづくり中心の仕事を担ってきた生嶋さんだが、いまは小売という新しい仕事にチャレンジしている。ふらりと訪れる地元の方や、さまざまな国から来日する観光客など多くの人との出会いが、今までにない刺激になっている。
「素材や仕立てなど、バッグのついて語りたいことはたくさんあります。しかし、それをお客さまにどうやって伝えるかは、まだ試行錯誤です。これまで取引先だった小売店の方は、すごいなと改めて感じます」。
商品は、本人が好きなユニセックスやメンズが中心で、軽くて、手頃な価格で買いやすい女性ものはほとんど置いていない。しかし、「こういうモノが日本製なんですね」と驚かれ、納得される。また、メンズライクなものを買われる女性もいる。
「自分たちが育ててきたブランドをお客さまに気に入ってもらい、買ってもらうことが、こんなに嬉しいとは思いませんでした」と、小売の原点に立ち返ったような感想を語る。
ネット販売も並行して運営している。さらに認知度を高めるべく、インスタグラムなどSNSも活用している。ファクトリーブランドとしての「ボーデッサン」を誇りに感じており、一人でも多くの人に、こういうブランドがあることを知ってもらえれば嬉しい、と生嶋さんは話す。
ブランド名の「BEAU DESSIN」は、フランス語で「美しいデザイン」を意味する。ショップ名につけた「ボエーム(ボヘミアン、自由人)」は、年代や性別、国境も超えてクオリティや価値観を、いろいろな人に届けるための、生嶋さんの「志」ともいえそうだ。



東京都台東区谷中7-17-9 轟天01
TEL:03・5842・1048