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売場で客単価アップに成功するポイント

中村岐雄(中村靴流通研究室 代表)

入店客数と一品単価は上げにくい

商品個々のバリューアップやマス媒体を使う販促策なども含め、売上高は「買上げ客数×客単価」ですが、その、買い上げ客数と客単価はさらに「入店客数×買い上げ率」「1品単価×一人当たり買上げ点数」の4つの項目に分解できます。←4つの項目をイラストで表現(人が項目のパネルを持って説明している)
この中で既存店の「入店客数」と「一品単価」は現在の靴市場環境下、上げにくい状況にあります。
米国での「商品検索、価格検索」などのオンラインリサーチは,2013年に14%だった検索が、2016年には56%に急上昇。検索が増えるということは「価格低下促進」を意味し、アパレル・雑貨の売上げ不振につながっています。
 日本も同じような状況にあり、今後ますます強まるはずです。供給過多、在庫調整の値下げ販売や競争対策などで、靴を売るほとんどの既存店で「プロパー消化率アップによる単価アップ」以外の「一品単価」のアップを施策とすべではないでしょう。


買上げ客数を10%アップにする方法

一品単価のアップを考えるのであれば、お客の目から見て明らかに魅力的な店舗への「業態改革」を前提とすべきです。
一方、「買い上げ率」を高める施策は多岐にわたりますが、売上げ対策として、特にセルフセレクションサービスを中心とする業態では重要です。9月の平日と土曜日の2日間、中堅駅ビルのABCマートで「入店客買い上げ率」を調べてみましたが、約9%でした。過去のSC内店舗約100店の調査では6%〜20%です。仮に買上げ率10%の店舗が1%アップ、つまり、入店客が100人とすれば、買わずに出られる90人の内1人を買上げ客にするだけで、入店客数が同じであれば、買上げ客数が10%アップすることになります。

客単価を上げる4つの買上げ点数アップ策←4つの方策をイラストで表現

1.店ごとの客単価目標を設定
店ごとの「客単価倍率(客単価÷1品単価)」目標を設定し、全員で達成に努力する。チェーン店の場合は月間、年間の目標達成率のポイント制で表彰するのも効果的でしょう。
  靴専門店の場合はアパレルより低く、ファミリーシューズでも倍率は1・2前後でしょう。


2.「2足目半額」などの複数買いを促す
  複数買いは2足で3000円〜5000円≠ワでは有効ですが、2足で6000円∴ネ上は2足目半額〜2割引≠フ方が効果的です。ただし、「半額対象品は低い価格の方の商品」または「2足目半額対象商品」などの表示が必要です。


3.割引券の配布
ファミリーシューズ業態で特に有効と思われるのが、次のような割引券の配布です。
「婦人靴のお買上げ客に、本日限り(日付記入)の紳士靴、子供靴20%〜50%割引券」

4.靴関連商品の購入を促す
 (1)関連商品: シューケア・フットケア用品。
  他にスリッパ、ルームシューズ、ソックス、バッグ、アクセサリー、アパレルなどが考えられますが成功例は少ない。
まず、@のシューケア、フットケアの販売に注力すべきでしょう。

 (2)陳  列: 専門店の陳列レイアウトは、買物客全員が必ず立ち寄る「レジ」を一番奥に配置するのが原則です。
そのレジの左右、近辺にシューケア、フットケア用品の陳列を、現状のスペースの2倍以上に拡大します。お客が目にとめて購入するか、スタッフの推奨によって購入するか、いずれの場合も、前記の陳列位置、スペースが効果的です。ABCマートではほとんどの店舗がこの原則を守っています。
 
(3)推奨販売: 商品の効用、使い方の知識をスタッフ全員が知ることが先決です。
一方、『効用』『使い方』を見やすく、わかりやすく表現した「ショーカード」を作成、陳列スペース拡大により、取り付けスペースを確保、商品ごとに取り付ける。
 取引先を増やし、類似の品目を増やすことは在庫効率を落とし、品切れも発生しやすい。できれば、メーカー1社と協働して売上げのアップを考えるべきでしょう。
 単品、またはシューケア、フットケア用品の販売コンクールはOJTとしても、買い上げ点数増にも効果が期待できます。
 
小売業にとって最も重要な数字の一つが「買い上げ客数」です。そのマイナスの継続は深刻に受け止めるべきでしょう。また、報道される各社の「客単価」はアップしていたとしても、必ずしも一品単価のアップを意味しません。