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ECで伸ばすこの会社 フラソリティ (バッグ・財布)

全売上げの40%を占めるチャネルに成長

ブランディング対策で自社ネットショップのみで展開

 創業は1952年。メンズに特化した、バッグのOEMを手掛けてきたカバンメーカー猪瀬が、2003年に立ち上げたオリジナルブランドが「フラソリティ」だ。当初は若いスタッフのモチベーションを上げるために細々と運営していたが、良い革を厳選し、耐久性が高い「フラソリティ」のビジネスバッグは、徐々にファンを獲得。いまでは猪瀬の売上げの30?40%を占める人気ブランドに成長した。
 メンズ専門職人が作る高い技術と、耐久性の高さが人気の要因だ。
 「フラソリティ」がネット販売をスタートしたのは7年前。「ブランディングを考え、5年前からは独自路線の直営にしている。モールを退店しても影響はありませんでした」と話すのは、ネットショップを一人で担当している、フラソリティ事業部ディレクターの猪瀬新吾さんだ。
実家に戻る前はウエブの仕事をしていたという猪瀬さんの力量で、ネットショップの売上げは右肩上がりで成長を続け、フラソリティ全体の売上げの40%を占めるに至った。
 ネットでよく売れるのはビジネスバッグやコードバン財布など。シンプルでメンズ色が濃いアイテムの売れ行きが好調だ。同ブランドは、ネット以外のチャネルでは中高年や女性の客も少なくないが、ネットでは40歳前後の男性が大半を占めている。この年代はフラソリティのもともとのターゲット。ネットの方がフラソリティの本質を愛するファンが多い。


消費者心理を考慮したSEO対策

 商品を直に手にできないだけに、ネットショップでは写真の力に寄るところが大きい。フラソリティではどのような工夫をしているのだろうか。
 「商品をいろいろな角度から写真を撮り、人が持っている写真も多く掲載しています。持ったときのイメージをつかんでもらうためです」。
 シンプルな二つ折り財布であれば、小銭入れを空けたところ、カード入れのアップといった画像も掲載。フラソリティならではの貼り合わせの薄さや革の高級感を感じてもらうため、カーソルを合わせると、生地が拡大される仕組みも取り入れている。
 テキストは検索を意識して、「◯◯のレザー」「イタリアンレザー」「ファスナーは◯◯」といった文言を多用。固有名詞を入れると、検索で引っかかりやすいからだ。ショッピングをする前にはまずネットで検索をする、現代消費者の購買心理を考慮したSEO対策である。

SNSの特性を踏まえた写真活用

 メールマガジンは月に1回発信している。内容は、商品の補充情報やイベントの案内など。
 SNSの活用にも余念がない。いま実施しているのはインスタグラムとフェイスブックだ。インスタグラムは2日に1回程度、フェイスブックは週に一度更新する。インスタグラムとフェイスブックは、それぞれの個性や機能を踏まえて、異なる写真を投稿している。
「インスタグラムの写真は、一眼レフカメラを使って撮影し、オシャレで小洒落たものを選んでいます。フェイスブックは情報ありきのSNSだと考えており、スマホで撮った写真を使い、イベントの告知などに活用しています」。
 インスタグラムを使って、商品やブランドを検索する消費者は少なくない。フラソリティのSNS活用戦略は、こうした消費トレンドをうまくとらえている。

お客の声や問い合わせから商品開発

 インスタグラムを積極的に活用するようになってからは、お客からのフランクな問い合わせが増えているという。
「以前は在庫に関する問い合わせぐらいしでしたが、いまは『違う革のバージョンにしようかどうか迷いました』といった、心情を吐露したようなメールが飛び込んでくるようになった。生の声は商品開発の参考にすることも多いです」。
 小銭入れのポケットの中に、1本ステッチを入れて取り出しやすくしたり、バージョンアップやモデルチェンジに活用したり、ネットショップによって増えた利用者との接点は、フラソリティの商品開発力を押し上げている。
メールへの対応にも工夫が光る。「できるだけすぐに返信し、お客さまの方でメールを終わることがないようにしています」。
 今後の目標は名入れサービスを導入すること。また、月に2、3個の商品プレゼントも計画している。