1964年に本州プラスチック工業として創業したホンシュ。58年目となる今年2月、齋藤摂次氏が代表取締役社長に就任したのを機に、第二創業期と位置づけ、組織変更と同時にCI(コーポレート・アイデンティティ)およびVI(ビジュアル・アイデンティティ)を刷新している。
同社はOEM、ODMを主力としたスリッパメーカーであり、アパレル店やHC(ホームセンター)で販売される室内履きの商品が生産の主力であるが、並行してオリジナル・ブランドにも力を注いでいる。
ホンシュは歴史あるメーカーながら、初めてオリジナル・ブランドを立ち上げたのは2018年と近年である。同社がオリジナル・ブランドを立ち上げた理由、狙いを齋藤社長は次のように説明する。
「消費者の声をアンケート調査で拾う中で、OEM展開だけではどうしても対応できない機能であるとか、コスト的には実現できないことなど、気づかなかったような声がありました。そこでオリジナル・ブランドを立ち上げることで、お客さまのニーズにきめ細かく対応しようと考えました。価格はOEM商品のワンランク上の2500〜3500円を中心に展開しています」。
また、オリジナル・ブランドの展開で得たノウハウや市場の反応を、OEMに還元させていくことも狙いとしている。
"ヘルス"テーマに開発された2500円の「TTT」
"スリッパにできること"をテーマとしたオリジナル商品の開発は、現在までに3つのテーマで、8ブランドを開発している。クリエイティブ、ヘルス、トラディショナルといったテーマで企画しているが、在宅時間が長くなり、リモートワークの普及で、これまで室内履きを履く習慣のなかった人が履くようになっている。特に履く時間が長くなったことで、機能面での要望が増えているという。
2020年に見本市に出品した、"ヘルス"テーマに開発されたスポーティーな室内履き「TTT(トゥー サウザンド トゥエンティ)」は、靴専門店の目に留まり、好調な売れ行きを見せ、リピート購入があるなど、ファンを作る商品となっている。
同ブランドはラストを使って作られた、左右のある室内履きで、ストレッチ効果があり、体幹筋力を使うことでカロリー消費も期待できるというもの。これまでのスリッパとは違い、アッパーの内側に甲を押さえるバンドがあることで脱げにくく、自然な歩行を可能にするなどの特徴を備え、大学の研究者のエビデンスも得ている商品だ。
「2500円はスリッパ売場ではごく安い価格ではないが、靴売場で並べられたときは、買いやすい価格の商品に見られました。また、ほかに同じような機能を備えた商品がなかったことも、人気商品になった理由でしょう」(齋藤社長)。
同社では「TTT」については靴箱、什器、POPを含めた売場提案をしており、売場サイズの対応した要望にも応えている。
3つのテーマで企画多彩な販路に提案する
ホンシュはコロナ流行の中で売上げを伸ばしており、22年1月期は前年比20%増の27億円となった。依然、OEM、ODMの商品が主力になるものの、3つのテーマを設定して、コンセプトやターゲット層を明確にしたオリジナル・ブランドの企画・開発力が、OEM、ODMにも好影響を与え、相乗効果を生んでいる。
これまでのアパレルチェーンやHC以外にも販路を広げており、「TTT」のように家の中と周りで履ける商品の提案も企画している。また、トラディショナルをテーマとした室内履きでは、インバウンド需要を含めて、海外市場も狙っている。また、葬祭・仏具関連での需要も提案している。
さらに、アウトドアでの需要のほか、防災用品のキット提供をはじめとする社会貢献活動「みじかプロジェクト」にも選定されており、災害に備えた"踏み抜き防止スリッパ"を提供している。
▽ホンシュ
東京都台東区三ノ輪2−13―1
TEL:03・5850・4710
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