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特集 通販がスゴイ!

/ アジアリング 高橋悟史


コロナ禍以降、靴やバッグの専門店、自社商品を企画・開発するメーカー卸でも「オンラインストア販売」の強化が見られる。中でも、楽天市場などのショッピングモール店や、ロコンド、ゾゾタウンなどのショッピングサイト店出品などが主流となっており、「独自ドメイン店」(※)で成功している店、ブランドはまだまだ少ない。
ショッピングモール店などと異なり、独自ドメイン店のオンイランストアではサイトに集客することが非常に難しく、途中で運営を断念するお店が多いのが現状といえる。
しかし、リピート客を育成したり、リアル店舗同さまに手厚いサービスを実現させていくためには、独自ドメイン店のオンラインストア運営を軌道に乗せる必要がある。
それでは、靴・バッグ販売向けで「独自ドメイン店」を上手に運営していくためのいくつかのパターンを整理してみよう。
※コンピューターの中にある自社だけの住所


パターン1

オムニチャネル型オンラインストア

―リアル店舗と顧客管理を一元化しアプローチ


「オムニチャネル」とは、企業と顧客のタッチポイントや販売経路をすべて統合し、総合的に顧客へアプローチする方法。そのためには、リアル店舗とオンラインストアの顧客管理を一元化し、お客さまの都合に合わせて、リアル店舗やオンラインストアを自由に使い分けしてもらうことが最低要件といえる。
全国に店舗を構える大型チェーン各社が力を入れており、各店のリアルタイム(店によって異なるが)在庫状況が確認できるので、来店前にサイズをチェックしたり、来店する店に「取り置きサービス」をお願いできる点が大きなメリットといえる。
ショッピングモールでは、リアル店舗への送客を歓迎しないモールがあるので、大手チェーン店は「独自ドメイン店」運営に切り替えていく動きが加速している。
 また、全国に展開するSPA型の婦人靴ブランドのオンラインストアも、独自ドメイン店では「全国の店頭在庫状況」が把握できるようになっており、来店する前に、スマートフォンで欲しい商品をチェックし、リアル店舗で実際に試し履きする人がとても増えているようだ。来店した際も、オンランストアの商品画像を販売員に提示し、店頭で商品を探す手間が省けるという新しい買い物スタイルも見られる。
このようにオムニチャネル化に向けた動きは、靴とバッグ関連企業でも充実化が見られる。


パターン2

独自性のある「品ぞろえ」「世界観」で全国からファンを集める専門店

― ターゲットを絞り込みリアル店舗にはない品ぞろえで

前記のオムニチャネル型は全国に店舗があり、リアル店舗に来店しやすいことが必要な条件となっているが、このパターン②は、店舗数は少ないが、独自性のある品ぞろえや、個性のある靴やバッグブランドの取り扱いで、全国からお客さまを集める事例となる。
オムニチャネルの場合は、幅広い品ぞろえやマスゾーンでもよく売れることが前提だが、パターン②の場合は、全国の医者や弁護士、実業家など、富裕層に向けた好感度、高価格帯の靴やバッグとの相性が良く、リアル店舗ではなかなか見掛けられないができない個性的な品ぞろえが非常に重要となる。
それは、靴やバッグの専業店ではなく、靴やバッグの商品構成比が高いセレクト業態店でアパレルから靴・バッグ・服飾小物までトータルコーディネイトが提案できるお店が多いのが特徴。感度の高いファッションを楽しみたいが、忙しくて行く時間がない富裕層に重宝されているようだ。
これらの人気店は雑誌やWEBメディアでも頻繁に紹介されるなど、雑誌エディターやスタイリストなど、業界の間でもファンが多いことが大きな特徴。また、人気雑誌に掲載された商品を取り扱うお店として、雑誌記事と連動した品ぞろえを実施していくことも成功の秘訣となっている。


パターン3

動画を活用しオンラインストアを新メディアに発展させる

―“お客のためになる情報提供”でサイト訪問を促すで


近年は、ユーチューブチャネル開設やインスタグラムのライブ配信などを通じて、動画投稿に力を入れる店やブランドが増えている。旧来のオンラインストア販売では、「売ること」を前提とした販促やPR活動が中心となるが、これらの動画配信は、あくまで「販売目的」ではなく、「お客さまのためになる情報」にフォーカスして投稿しているので、何度もサイトに訪問しチェックしたくなるお店という点が大きな特徴となる。
動画配信例では、「人気ファストファッションと相性の良い靴バッグの組み合わせ方」や「人気デザイナーと対談動画」、「シーン別オケージョン靴の楽しみ方講座」、「バッグの上手なメンテナンス方法」など、独自ドメインのオンラインストア店を、より充実させたメディアに発展させている点が、多くのお客さまに喜ばれている要因といえる。中には、ユーチャーブチャネルのフォロワー数が非常に増え、ユーチューブ上でのインフルエンサーとなり、動画配信での広告収入が新たな収益源になったという事例も見られる。


パターン4

足計測などのサービスで店頭接客に近い体験を提供

― 足のデータを数値化して最適の靴を勧める

これは靴販売に限定されるが、オンラインストア販売で一番の障害となっていた靴フィッティングのサービス面に大きな特徴を持ち、店頭接客に近い体験を提供するパターンとなる。
お客さまの足サイズを測定することが必要となるが、「①専用アプリで簡単に足の計測した上で、オンラインストアで購入してもらう」「②サイト上で簡単な計測方法を提示し、自宅で計測を促し、サイズ選びの参考にする」「③フット?メジャーを使用し、マイサイズを登録する」「④ゾゾマットなど他のサービスで計測したデータを参照し数値を入力する」などリアル店舗での計測とは異なり、簡易な計測方法となるが、足サイズの数値を元に、お客さまに最適なサイズ選びの参考にしてもらうことを特徴としている。
革のドレスシューズやパンプスではデザインだけでなく、フィッティング重視ニーズは高い。靴販売の際、足計測のデータを参考にお客さまに最適なサイズを提示する試みはさらに真価が問われる。現時点ではオリジナルパンプスなどを販売する婦人靴ブランド、人気スニーカー販売の一部の店舗で見られる試みだが、全国の靴小売店でも、ぜひ取り入れていきたい視点といえる。


「サービス面」に特徴を持たせること

このように「独自ドメイン店」の運営では、リアル店舗の品ぞろえをそのままサイトアップし、リスティング広告で集客するような基本運営方法だけではなかなかファンを作ることは難しい。
アマゾンやゾゾタウン、楽天の店では実施が難しい「サービス面」に大きく特徴を持たせ、リピートしたくなる要素をしっかりと用意し、お客さまを飽きさせない工夫をコツコツと続けていくことだ。
また、近年はリアル店舗への送客に適した「次世代アプリ」の開発も進んでいるので、今後は中小企業の靴・バッグ専門店でも、リアル店舗アプリと独自ドメイン店を連動させた、次世代感覚のオンラインストア構築が必要となるだろう。