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特集 旅に出よう! 企業動向 エース

企業動向 エース

GWのスーツケース販売は19年の売上げに近づいた

移動制限の緩和もあり、人の流れが活発になっている。移動に欠かせないスーツケースやボストンバッグなどを扱うエースは、直近のゴールデンウィークは好調で、想定した数字に近づいている。同社取締役マーケティング本部長の岡田行生さんに最近の状況を聞いた。

国内旅行の回復で小型スーツケース好調

――ゴールデンウィーク(GW)は多くの人が旅行や帰省で移動しましたが、御社の販売状況は?

岡田 今年のゴールデンウィークはカレンダーの並びもよく、多くの人が外に出かけたことで、当社製品の販売も好調に推移しました。スーツケースの売上高はお陰様でコロナ前の2019年を上回っています。
スーツケースの需要は、JALやANAの航空会社が発表する航空機の座席占有率の数字とほぼ同じような動きを見せます。日本人の海外渡航はまだ回復途上ですが、22年10月以降は移動制限の緩和や全国旅行支援もあり、国内旅行に行きたいといった機運は爆発的に高まっています。特に機内持ち込みサイズの、小型スーツケースが好調に動いています。

――スーツケースの人気商品は?

百貨店で人気なのが「プロテカ」です。中心価格が6万から7万円台の商品で、富裕層の方や、メイド・イン・ジャパンの製品を求めるインバウンドの需要があります。一方、若い人に人気なのが「ace.」です。こちらは中心が3万円台です。
会社全体で年間を通してみた売上げ比率は、かばん6割、スーツケース4割です。

女性のビジネス用途のリュックが伸びる

――かばんの動きに変化はありますか。特にビジネス用途のかばんの売れ行きは?

これまでのビジネススタイルは、2本手の手提げが基本でしたが、コロナ前から、スニーカー通勤の浸透で、靴ではスニーカーが履かれたように、バッグではリュックが売れ出しました。コロナの流行で仕事がリモートワークとなり、パソコンを持ち歩く機会が増えてくると、さらにリュックに移行しました。スマートフォンの普及もリュックの需要に影響しています。
こんな中で人気なのが「ace.」のガジェタブルというビジネスリュックシリーズです。電車に乗った際にほかに人に迷惑にならないよう、前持ちしても荷物の出し入れがしやすいように設計されたものです。

――最近は女性もビジネスでリュックを使っています。

エースにおけるレディスビジネスリュックの売上高は、コロナ前に比べて11倍になっています。当社ではメンズが7割から8割を占めますが、女性のシェアが急激に伸びています。コロナ禍の中で持つ方が増え、その便利さから人気が高まっているのだと思います。
これまで女性のシェアは低かったのは、洋服とのマッチングの問題もあります。これはビジネスファッションがカジュアル化傾向にあることや、リュックのデザインバリエーションが増えたことで解決されてきていると考えています。リュックの企画では、華美な装飾にならず、どんな洋服にも合うような癖のない、シンプルなデザインを心掛けています。同時にリュックとの擦れによる衣類へのダメージを抑える素材選びにもこだわっています。

海外渡航が回復すればコロナ前以上に戻る

――リュックはどこも手掛けており、競合の激しい商品です。差別化は?

当社にはかばん作りの長い歴史と、専門で手掛けているという優位性があります。ハーネス(肩ベルト)一つにしても、取り付け角度、厚さ、滑りにくさなど、人間工学に基づいた科学的な見地で商品開発をしています。リュックはメンズで2万5000円ほど、レディスで2万円が中心ですが、価格を超える価値があり、使ってみて良かったから売れていると思います。

――今後の需要見通しは

スーツケースは渡航用品であり、パンデミックや海外情勢が需要に影響します。今後、大きな変化が無ければ、夏の大型連休に向けてさらに需要が回復していくと見ています。例えば、中国団体旅行が今後解禁されれば、インバウンド需要にさらなるプラスの影響があるでしょう。
現在、直営店はフルプライスを38店、アウトレットなどを52店出店していますが、百貨店内の売場も含め、インバウンドが集まることから特に都心型店舗は好調です。今後の出店については、採算性を考慮しながら検討していきます。