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特集 機能もファッションも大人目線「子供靴(Kids)」

キッズの接客とフィッティング

子供の足は大人のそれとは異なり、年齢による変化も大きく、靴選びも難しい。一昔前と比べ、親御さんの知識も増している。販売する側は、どんなことに注意してフィッティングしていけばいいのだろうか。また「良い子供靴」とはどのようなものなのだろうか。子供の足靴に詳しく、フィッティングや販売も手掛ける、キッドの小堤啓史代表に話を聞いた。

理想的なフォルムの足部環境に近づける

Q. 1 子供の足の特徴は?
小堤 子供の足は、年齢によって大きく異なります。大人の足との差も、年齢によって違ってきます。3歳くらいまでは基本的にはO脚、偏平足で、肉付きも多いです。3歳を過ぎると足の剛性が生まれ、アーチも上がり始めます。もちろん、個人差はあります。
 年齢が上になるにつれ、骨の位置関係、結合組織の強度などが理想的な骨格に近づいていきます。ここで、理想的な状態に近づけられるような靴を選び、フィッティングしていく。一人ひとりに対して何を解決すべきなのか、多様な要素と目的をすり合わせていきます。

Q.2 フィッティングの手順は?
――大まかな手順としては、次のようになります。
@ 足を計測。フットゲージで足の長さと幅を測ります。年齢や親御さんの要望も踏まえ、ときには機械で足底圧も計測します。
A 足を触って関節の可動域を確認します。
B 立ったときの足のアライメントを見ます。ここまでで、どんなタイプの靴で、どのサイズがいいのか見当をつけて、靴を用意します。最初に中敷きを出して足を乗せ、合いそうかどうか確認します。
C 試し履きをしてもらい、歩行をチェックし、そのタイプの靴で良いか変更すべきか確認します。

ここでも、成長のスピードには個人差があり、同じお子さんでも時期によって変化が異なることに注意しておかなくてはなりません。
子供の足には、いろいろな個性があります。その前提のもとで、理想的なフォルムに近づく足部環境になるにはどうしたら良いかを考えていくのです。そこが、フィッティングのノウハウであり、技術であるといえるでしょう。靴をつくる側にも、その知識を共有していただけたら望ましいです。
 というのも、本来ならば理想的な木型を考えぬいていかねばならないのでしょうが、現状は、昔からあるものを改良している木型が多いのです。これは大人も同じで、「脱げないように」「痛くないように」改善していくのは対処療法にすぎません。小売、作り手ともにどんな靴であるべきかの共通認識を持って考えることが必要です。


必要な個所に固さがあり、ポールジョイントが曲がる

Q.3 計測器を使うことの注意事項は?
――当店では2種類のデジタル計測器を置いています。一つは3Dのもの、もう一つはサイズと足底圧が計測できるものです。言えるのは、現状の測定器ではそもそも静止立位状態しか測れません。足は片足立ちか両足立ちか荷重の違いだけでも形が異なります。つまり歩けば1歩ごと変形するということです。だから、靴選びに計測だけの情報ではとても足りません。最初の目安に過ぎないのです。足長・足幅を測ってその寸法通りの靴を出しても、ぴったり合うわけではない。これは、子供靴に限ったことではありません。
 お客さまも店側も、デジタル計測器なら間違いないと思いがちですが、あとで「何だか履き心地が悪い」という体験を多くの方がしています。シンプルにいうと、足が動いているときの変化をも考えようということです。

Q.4 付き添いの親への対応は?
――知識のある親御さんが増えています。ネット内には多くの情報が溢れており、インスタグラムなどで発信される情報を見ている方も多いので、「子供のことだから」と安易な対応はできません。例えば「うちの子は足が細いんです。細い靴がいいのでしょうか」と訊かれ、「それでは細い靴を」と追随してしまうと、ベストチョイスではないこともあります。なぜお母さまがその情報を得られたのか、なぜ気になられたのかを会話の中で聞き出していく。そこから、「お子さんの足にはこういう特色もあるのだから、幅だけにこだわらずこちらの靴の方がいいですよ」とお勧めすることもあります。
 単に「違います」というのではなく、しっかりお話しをうかがって考えを引き出した上で、ちゃんとお答えします。もちろん、それには販売する側にもきちんとした知識が必要になってきます。

Q.5 良い子供靴の条件とは?
――まずは、次の4つの条件を満たしていることが望ましいと思います。
@ 踵の幅が適度に絞られていて、固さがあること。踵の倒れこみを防ぐには、必要な条件です。
A 靴底がきちんとポールジョイント部分で屈曲すること
B アッパーのベルトがしっかりと締められること。折り返せるターンバック仕様で2本ベルトであることが望ましい。
C 靴底などに安定性や耐久性があること。
要は必要なところに必要な固さがあること、ポールジョイント部分が曲がることが基本的な条件です。また、ターンバック仕様で甲部分がしっかり止められることも必須に近いと思っています。甲がぶかぶかだと前滑りし、大きい靴でも指が当たって丸まってしまいます。

3歳までは4カ月に1度、3歳以上は半年ごとにみる

Q.6 健康に育てていくための注意事項とは?
――足と歩行をともに見ていくことです。スムーズに歩くには足の機能がきちんと発揮されなくてはなりません。どこかにちょっと不足がありそうにみえたら、その部分を靴で補っていくのです。
例えば踵がハの字になっている外反偏平などの場合、どういう靴がいいのか考えます。踵が倒れ込んでいる子供は歩行時にムダな力を使いがちであったり、膝や股関節に影響を与える可能性もあります。こういった負担を軽減してスムーズに歩行できるようにするわけです。
 では、いい靴をはけば土踏まずができてくるのか、というと絶対できるとは言い切れません。でも、(歩行の)効率は、靴で補うことができます。靴と足と歩行を見て、今と将来見向けて何を提供すべきか考えるのです。

Q.7 アフターケアを行う頻度は?
――あくまで平均的にですが3歳くらいまでは、4カ月に1度くらい、3歳以上になれば半年に1度くらいの頻度で見ていけばいいと思います。当店のお客さまは、歩き始めから小学校中学年までのお子さんが多いです。

Q.8 子供靴を扱うための知識取得は?
――子供靴を置いているすべてのお店が、必要な知識を持っているわけではないと思います。実際に勉強しようとしても、体系立てて子供の足や子供靴のフィッティングを学べる場は非常に限られていると思います。一つの方法として、当社(キッド)の子供靴専門の関連会社である「フェルゼ」の代理店となるというものがあります。フェルゼは機能的な子供靴の供給とともに、代理店には専門的な研修・セミナーを提供しています。子供靴をどう見立てるのか、現場に近い情報をお届けしています。