今月の記事・ピックアップ 2024・2
 フットウエアプレス > 新社長に聞く 鶴見正臣氏(林五社長)
新社長に聞く 鶴見正臣氏(林五社長)

「時代のニーズを意識しながら存在感のある林五を目指す」


バッグ業界では最も古い会社といわれる林五。1890年(明治23年)に創業し、鞄やトランクなどを中心とした品ぞろえで事業を展開、その後、帆布かばんなどの製造を手がけ、原料調達、製造、販売までを一貫して行う事業で拡大してきた。
この林五が昨年9月、創業家とは関係のない、バッグデザイナーやMDプランナーとして活躍してきた鶴見正臣さん(49)が9代目社長に就任した。

9代目社長に就任しビジョンの実現目指す

「元はメンズバッグのデザイナーとして業務に関わっていました。これまでさまざまな企業と仕事をしてきましたが、経営者として組織を束ねるのは初めてです。
実は以前、前社長の石見健氏に対して、これまでのやり方では、抜本的に変われないのではと考え、自分のビジョンを提案しました。林五が持つ130年という歴史を踏まえ、未来につなげるための方向性を示し、そこから何度も話し合いを重ね、最後は『ではやってみてくれ』という鶴の一声で、自分のビジョンが採用されました」。
「良くも悪くも歴史ある老舗企業なので、中にいると大きく舵を切ることは難しい。そのため、自分のような外部の人間のほうが、思い切った施策ができるのではないか、と思っています。林五の本社は大阪ですが、普段私は東京オフィスにおり、基本的に会議などはリモートです。この会議も効率化を図るために回数を減らし、スピード感と時代のニーズを意識しながら仕事するようにしています。ただし、大阪本社に行った時には社員と1対1で話し合い、信頼関係を構築するよう心がけています」。

自分たちの想いを込めた最高のかばんを提供したい

「コロナの流行する以前から、卸の存在感が薄くなっているのを感じていました。これから生き残るために、今までと同様にやっていたのでは難しい。かばんやバッグ類はあくまでも嗜好品であって、かばんの好きな人のために、自分たちの想いをベースに、最高のものを作らなくてはユーザーには刺さりません」。
「林五には『ファイブウッズ』や『KUBERA9981』などのオリジナルブランドがあり、最近では百貨店の売場などでファンを増やしています。これからはさらに尖ったテイストで、買われる方に〝どんな喜びや楽しみを提供できるのか?〟を問い続けていきたい」。
「130年の歴史あるものづくりをベースに、ここからどう今様にアップデートし、メンズとレディスの垣根を越えて、ジェンダーレスを意識した新たな〝林五らしさ〟を出していけるか。人材においても男女や世代を問わず、全員がいかに〝熱く〟なれるか。その点がこれから問われていくと思います」。

 ◇  ◇  ◇
 鶴見社長は林五の事業とは別に、自身で「CRANE(クレイン)」というセレクトショップを東京・蔵前で運営している。ユーザーの声をダイレクトに知るために、一種のラボラトリーとして展開している。そこではオリジナルの革小物やヨーロッパのビンテージ雑貨などを並べ、一人ひとりのお客に丁寧に接している。
日本人の「ものづくりに対する勤勉さ」を改めて打ち出したいと語る鶴見社長。大きな転換期にある老舗企業の試みだ。


 <会社概要>
 創 業 1890年
 資本金 9000万円
 社 員 15名(大阪・東京併せた鞄事業部)
 本 社/大阪市中央区南船場4丁目11-19 心斎橋鉄田ビル8階 
      TEL:06-6243-7676
 東京オフィス/東京都台東区蔵前4丁目29-8 1階 TEL:03-6452-2177


<つるみ・まさおみ略歴>
 1993年靴販売の三中井入社。バッグ企画卸、革問屋などを経て、2011年フリーランスに。(株)コランドにてメンズブランド「チマブエ・グレースフル」を立上げ。林五で「KUBERA」の立ち上げに携わり、現在に至る