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特集 手を使わずにサッと履ける「スムーズイン」 売場レポート

 シューマート 高崎上中居店(群馬・高崎市

    ウォーキングからハンズフリーに需要が移行

かがまずに履ける靴がシニア中心に広がる

 「シューマート高崎上中居店」は、高崎駅から車で5分ほどのところにあるロードサイド店である。店舗面積300坪の大型店で、メンズ・レディス・キッズのフルラインをそろえる。スニーカーやカジュアルシューズを軸としながらも、メンズビジネスや子供靴も充実している。
 このところ店頭で人気が高まっているのが、手を使わなくてもはける「スムーズイン」「ハンズフリー」系のシューズである。この種の靴が一般に広く知られるようになったのは、昨年「スケッチャーズ スリップインズ」のテレビCMが流れるようになってから。
 「最初は、『テレビのあれ、あれ』といって来店される方も。それでもスタッフに通じてしまうのですから、人気が高かったといえるでしょう。ファン層はお仕事をしている若い世代からシニア層まで幅広いのですが、実はシニアのファンが多いのです。『膝や腰が痛くてかがんで靴を履くことができない』という方がお求めになっていきます」(山﨑聖子さん)。
 ゴールデンウィークに向けてチラシを配布、そこにスリップインズを含めたハンズフリー系シューズを掲載したところ大盛況。リピーターも増え、さらに母の日に向けプレゼント用に多く買われた。

「スケッチャーズ」は仕事履きで使える黒が人気

 商品的には、「スケッチャーズ スリップ・インズ」の人気が高いのは、やはりテレビCMの影響が大きい。軽く、かかと周りがしっかりしていて足入れが容易である。スケッチャーズはカラフルなブランドだが、もっともよく売れるのは仕事履きにも使える黒という。
価格は1万円前後。「アーノルドパーマー」はメンズのみで、5000~6000円のミドルプライス。ナイキの価格帯は7000円前後。シューマートのPB「イージーステップ」からも、同様のシューズが発売されている。幅広でゆったりと履け、価格帯も4000~5000円と手に取りやすい。
 機能的には各社ともほぼ横並び。女性にはカジュアルデザインのスニーカーが人気だ。



動画やPOPで積極的に販促

 これまでシニアシューズといえばウォーキングシューズが中心だった。しかしこういったタイプでは満足せず、ハンズフリータイプの靴に流れてきている。
 「いくら利便性の高い靴でも、サイドファスナーなんて嫌、介護シューズなんて履きたくないとおっしゃるアクティブシニアのマインドに、ぴったりと合ったわけです。ですが、当店では積極的にお勧めはしていません。あくまでお客さまのお悩みに寄り添うことが大切で、その方のTPOを見て、足の状態に合うものをお勧めするのが基本です」(山﨑さん)。
また、座ったまま履けない介護が必要な人や80代以上にはお勧めできないという。やはり、70代までのアクティブシニアの方の靴なのだ。
 久々に盛り上がっている新しい市場だけあって、メーカー各社とも動画を流す、POPをつけるなど積極的に販促をかけている。シューマート高崎上中居店でも、男女のスニーカー、メンズビジネス、スケッチャーズ、子供靴(スケッチャーズのみ)にそれぞれコーナーを設けている。来店客の反応も上々だ。
 「今後は機能的にも進化し、アイテムも広がっていくでしょう。一つのジャンルとして確立されるかもしれません。もしかすると、ランニングやウォーキングの中にもひろがっていき、大手メーカーも製造を開始するかもしれません」(櫻井亮さん)。
 現状では子供靴のハンズフリー系の靴はスケッチャーズが中心だが、今後ブランドを増やしていくことを検討中だ。

群馬県高崎市上中居町178-1
TEL:027・320・8306















 アスビー イオンモール東久留米店

    幅広い年齢層に周知され、リピーターも

TVCMの影響で「スリップ・インズ」指名買い

 イオンモール東久留米は、西武池袋線東久留米駅から車で5分ほどのところにある。アスビーはこの2階にあり、2014年の館のオープンと同時に開店、アスビーキッズとともに約120坪の店舗を構える。岩上(いわかみ)直樹店長は東久留米市の出身で、このモールにあるグリーンボックスの店長も経験しているベテランである。
 ここは暮らしやすい地区で、近年30~40代のファミリー層が増えている。同店のお客も土日にはファミリー層が多く、平日はシニア層がよく来店する。
 「手を使わずに履ける」シューズの先駆けは、2022年にスタートしたスケッチャーズの「スリップ・インズ」。23年のテレビCMの影響は大きく、昨年9月ごろから火が付いた感がある。なお、アスビーを展開するジーフットでは、このタイプの靴に決まった呼び方はなく、「サッと履ける」「手を使わない」「靴ベラいらず」などの言葉を使っている。
 「CMの効果は絶大で、『テレビ見ました』というお客さまがたくさん来店されました。テレビCMを流していない時期でも、お求めになる方が多かったですね。一度履くとリピーターになられることが多く、『これしか買わない』方も。若い方からシニアまで、ファンの年齢層は幅広いです」(岩上直樹店長)。
 小さい子供のいる家庭では「子供を抱いたままさっと履ける」と、シニアでは「靴を履くときにかがむのが苦しい」とそれぞれ人気になっている。「脱ぎ履きが面倒」という男性はどんな年代にも多く存在するらしく、男性からの人気も高い。家族の一人が購入すると、「それでは自分も」とほかの家族が購入に来店したり、「友人に勧められた」などの口コミもCMと相まって効果をよんでいる。

一般のスリッポンと機能を混同するお客も

 人気は圧倒的にスケッチャーズで、ほかに「プーマ」「ルコックスポルティフ」「ナイキ」などからも出ている。ただし、従来の「スリップオン」「スリッポン」と混同し、極端な場合「靴ヒモがなければみんなスリップ・インズ」と思っている人もいる。そのため、接客の際には「かかとに芯が入っていりため、しっかりしていてつぶれにくい、かかと部分にピロウ(まくら)のようにクッションが入っているので楽に履ける」こと、「そのまま履くと、時にかかとがつぶれてしまうスリッポンとは違う」ことをはっきり伝えている。
 「接客時に『脱ぎ履きが面倒』『履くときの負担を軽くしたい』という方々以外には、積極的にお勧めすることはしていません。あくまで、お客さまのニーズや足の状態に合った靴をお勧めすることが第一だからです。でも、積極的に告知しなくても、『CMの商品はある?』『手を使わない…』と指定されるお客さまがとても多いのです」。
 価格帯はスケッチャーズで1万~1万6000円、ルコックスポルティフ、プーマが8000円程度。各ブランドそれぞれ脱ぎ履きしやすい機能が搭載されている。
 気になるのは、「すぐ履ける」は「脱げやすい」のではないかということだ。

一時的なブームではなくジャンルとして定着期待

 現状の売れ方はメンズ3~4割、レディス5割、キッズ1割で、子供靴への普及はまだこれから。だが、子供たちは学校などで履き替えのシーンが多く、面倒だからとヒモや面ファスナーをそのままにして無理に履いてしまう子もおり、「サッと履ける」キッズは今後、市場の広がりが見込まれる。
 アスビー店内ではブランドごとに展示し、特に「サッと履ける」靴のコーナーは設けていないが、見ていくとかなりのブランドに少しずつこのタイプの靴があることがわかる。
 「これから、もっと多くのメーカーが参入し、市場が拡大していくでしょう。リピート率も高くなっていて、支持層も幅広い。一時的なブームではなく、当たり前のジャンルになっていくと考えています」。
 
東京都東久留米市南沢5-17-62
TEL:042・451・7710