今月の記事・ピックアップ 2024・6
 フットウエアプレス > 個性派バッグショップ BACK SCRATCHER(バック スクラッチャー)  (さいたま市・浦和区)

革の魅力を伝えながら販売。工房も備えてオーダーにも応える

三代目が開発した新業態バッグ店

東西自由通路が通ったJR浦和駅には、伊勢丹浦和店と併設して専門店街の「コルソ」がある。昔ながらの地元密着型の商業施設だが、この中に「BACK SCRATCHER(バック スクラッチャー)」という店名のレザーアイテム専門店が2021年にオープンした。
ファサードは落ち着いたブラウンでまとめられ、さながらラグジュアリーブランドのような趣気を持った売場だ。約15坪ほどの店内には、丁寧に縫製された革バッグや革小物などが、一点ずつ間隔をおいて置かれている。
店名とブランド名でもある、この「バックスクラッチャー」とはどんな意味なのか? 
「英語で直訳すると〝背中をひっかく〟つまり『孫の手』という意味です。実はここ浦和コルソの中には、祖父の代からのバッグ専門店がありました。三代目で孫である私が、祖父から店舗を引き継ぎ、新しい業態としてこのオリジナルのレザーショップを立ち上げました。また、英語だと『相互利益』という意味があることを知り、まさにお客さまと私たち双方が、革を通じて幸せになりたいという想いから、このネーミングにしました。〝いいものを末永く使ってもらいたい〟という理念は、祖父も私も共通して持っているので、私の代には今の時代に合ったコンセプトで店づくりを行いました」(店舗責任者で3代目の上田啓介さん)。

エイジング革に惚れ込み自身でも手縫いで製作

弱冠30代の上田さんは、バッグメーカーやアパレルなどさまざまな職種を経験。最終的には「革のエイジング」に魅せられて、独学で革バッグづくりを学び、このブランドを立ち上げた。以前は修理品を観察しながら、革のエイジングや縫製についての知識を吸収したという。
店内のバッグは腕の良い外注の職人に依頼しているが、フルオーダーの注文が入る際には、それはすべて上田さんが〝手縫い〟で製作している。店舗の近くに工房を構え、急な依頼が入ると徹夜で仕上げることも少なくないとのこと。
革素材はほぼヨーロッパのレザーを中心に、フルベジタブルタンニンのミネルバボックスや、ドイツのシュリンク、トーマスウエア社のブライドルレザーなどを使用している。上代はバッグが5万から19万円、革小物が1万5000円から6万円と、贅沢な素材を使用しながらも納得できるプライスだ。
上田さん一押しのオリジナルのトートは、開口部がなく、フロント部のU字ファスナーで開け閉めするユニークなデザイン。内装にはミンク調スエード素材を張り、可動式の収納ポケットは書類やパソコンなども余裕で納めることができる。
「特に、ミネルバボックスのエイジングはダイナミックなので、この色を見せるとお客さまもびっくりしますね」と話す上田さんは、エイジングサンプルを見せて、革の変化を見比べてもらう。確かに最初の明るいカラーが、艶を帯びて味わい深いディープな色目に変化している。

スタッフ全員が「レザーソムリエ」取得

「プライスはあえて出さず、まずは『革の面白さ』を伝えることにしています。値段から入ると引いてしまう方は少なくないので、まずは革のエイジングを説明し、バッグの独特な作りなどをお伝えすると、興味持って頂いた方は必ず再来店されます。スタッフは全員『レザーソムリエ中級』の資格保持者なので、素材についてのしっかりした知識をお伝えすると、納得いただけます」(上田さん)。
購入した製品は二年間の無料修理を行い、その後も永年修理することが可能(その際は有料)。店舗に持ってくればレザーケアはサービスで行っている。ギャランティカードもフルセットでお渡しする徹底ぶりだ。
「革にはそれぞれ血筋やトラ(動物に首にシワ模様)など独特な模様があるので、お客さまにすべての在庫をお見せして、お好きな個体を選んでもらっています。革好きな方が十二分に満足いただけるようなブランドにしていきたいと思っています」。

◆BACK SCRATCHER (バックスクラッチャー)
 さいたま市浦和区高砂1-21-1コルソ1階 048-822-6791