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異色靴ショップ異色靴ショップ MARUGO TOKYO(東京・中央区)

地下足袋の文化を受け継ぐ「足袋シューズ」

「MARUGO TOKYO」は、東京駅から徒歩で10分ほどの、昭和通り近くにある路面靴店である。展開しているのは岡山・倉敷市  に本社を置く「丸五」で、自動車で使われるゴムの部品や安全スニーカー・地下足袋などを生産しているメーカーだ。丸五は1919年創立の老舗で、最初に地下足袋をつくったメーカーの一つ。
MARUGO TOKYO店内に並ぶのは地下足袋から進化した「足袋シューズ」で、現会長の藤木茂彦氏が「地下足袋の文化を後世に残したい」と、生産拠点の一部を中国から創業地である倉敷に戻し、生産を開始したもの。
直営店はこのMARUGO TOKYOのほか、MARUGO KURASHIKI、KOYAYA(いずれも倉敷)の計3店舗。販売ルートは直営店のほか、ECサイト、POP-UPショップ(百貨店を中心に、2~3ヵ月に1回程度開催)だが、それでも売り切れてしまう商品が出るほどの人気である。

足本来の力を引き出す足袋型スニーカー

「足袋シューズ」の特色は、地下足袋の流れを汲んだ親指が分かれていることにある。ただし、形やカラーはさまざまで、バリエーションに富んでいる。
「ITARO」はサイドゴア付きのブーツで、アッパーはレザー、インソールにはヒノキの粉末を配合。ブランド名は創業者の藤木伊太郎氏にちなんでいる。「tabiRela(たびりら)」は代表的なブランドで、歩きやすい足袋型のコンフォートシューズ。
同じシリーズの「tabiRela MARY」は女性向けパンプスで、アッパーにレッドやネイビーなど発色の良い素材を採用。これからのシーズンに人気が出そうなのが「Emma(エマ)」というサンダル。
充実しているのはスニーカータイプで、中でも「hitoe+(ひとえプラス)」は、足本来の力を引き出すことのできるトレーニングシューズだ。
「日本には古くからわらじの文化があります。その意味では、日本人の足に合った形といえるのではないでしょうか。指が固まらずゆったり履けることがポイントで、足の指を使って地面をしっかりととらえることができます。自然に歩けるようになった、外反母趾が楽になったというお客さまがたくさんいらっしゃいます」(ウェルネス推進部 志村啓太さん)。
 工場では多くの職人を抱え一足ずつていねいに仕上げており、女性の職人も多いという。倉敷産のデニムや帆布も使い、「メイド・イン倉敷」であることを誇りとしている。




顧客は40代以上の女性インバウンド客も多い

 店舗は20坪ほど。店内棚はウッド調でまとめられ、床に大きな足袋型のカーペットが敷かれている。繁華な東京・八重洲口から少し離れたところにあるが、「整体で勧められた」「外反母趾にやさしいから」という女性や、「SNSを見てきた」外国人観光客などが次々と来店、客足の絶えない繁盛店となっている。顧客の中心は40代以上の女性で、来店客の半数が外国人観光客。来店客の目的意識は高く、7~8割が購入に至るという。
 「大半の人が、『足袋シューズ』は初体験。普通の靴と選び方や履き方が違うのでは、と思っている方もいらっしゃいます。そのため、ていねいに接客し『普通の靴と同じ』であることを伝えていきます。東京・品川で開催されるイベント『PASS THE BATON MARKET』(注)に出店しているのですが、最初は認知度も低く『地下足袋って、工事現場で職人さんが履くのだよね』といわれたものです。でも今は『ぜひ履いてみたいと、探していました』とおっしゃる方も多くなりました」。
 関西方面でPOP-UPショップを行うと「こちらにもお店が欲しい」という声があがる。増えていくファンのニーズに、できるだけ応えたいと志村さんは考えている。

東京都中央区京橋1-17-1
TEL:03・3566・6105

注)PASS THE BATON MARKET:企業やブランド、産地がストックを持ち寄って販売するイベント。品川で年数回開催